シュレンケルラの室内

Der Ausleger am Schlenkerla

シュレンケルラの飾り看板
この看板には、"シュレンケルラ"の名前の由来となった人物、アンドレアス・グレーザーが描かれています。1405年の文書で初めて言及された時のこの建物の名前、BLAUEN LÖWEN(青いライオン)がその上に横たわっています。左手前に下がる六芒星はフランケン地方で伝統的に醸造所のシンボルとして使われてきたものです。また同様に見える“1678”というのはこの場所の醸造権に関する最古の記録が残された年を示したものです。

バンベルクの魔法の言葉“シュレンケルラ”にはさまざまな意味があります。この町を訪問する人々は、タクシーの運転手から、あるいはホテルで、遅くとも大聖堂への訪問を勧められた後で、この言葉を耳にすることになります。この3つの音節からなる言葉は、美しい木骨造(もっこつぞう)の家屋や重いオーク樽から直接注がれる燻製ビール以上の意味合いを含んだものです。

飲み物と美味しい料理だけではシュレンケルラにはなりません。ビールを静かに一人で飲みたい、そんな人は少し驚くかもしれません。年季で艶々に磨き上げられた木製のテーブルにつくと、何気ない陽気な会話につい誘われてしまうからです。普段ドイツ、フランケン地方の人々は、見知らぬ人におせっかいな声をかけたりしない人々ですが、この旧市街にある燻製ビールのパラダイスへと2段の階段を上ると、その控えめさが魔法のように消え去っていくようです。

そしてこれには伝統があります。300年以上もの間、この美味しい黒褐色のビールには、普段は控えめな人柄の人々を陽気に、饒舌にしてしまうという定評があるのです。その昔、普段は厳格な聖職者が、馬丁や店主と和気あいあいと一杯を嗜んでいたテーブルで、今日では交響楽団の音楽家が庭師のおかみさんの隣で「ザイドラ」(半リットルジョッキのビール)を飲み、町議会議員は職人さんと乾杯をしています。エヒト・シュレンケルラ・ラオホビアは社会的な背景を問わず、すべての人々の心を繋いでくれるのです。ここに来ると訪問客は地元の人々と気軽に会話を交わし、仲が悪くて有名な南ドイツと北ドイツの人々でもたいてい、お互いが好きになりそれまで持っていた偏見など消え去ってしまいます。

 

軽い朝酒であれ、軽食であれ、昼食であれ、おやつであれ、夜の一杯であれ、この居酒屋で盃を交わす人々は、多種多様な人々、ゲーテが言う『色々な人の群れ』なのです。名作『ファウスト』の『大勢の者にとってはここが真の天国なのだね。ここでは己も人間だ!人間らしく振舞っても好いのだ!』という一節は、有名な詩人、ゲーテがシュレンケルラに座ってその様子を描写したのではないか、と思わせるような一節です。ここではテーブルからテーブルへと飛び交う笑い声と会話が、大きくなったり小さくなったり、潮の満ち引きのように、海のうねりのように、耳に優しく響いてきます。そうは言っても、時折シリアスな会話に没頭する小さなグループを見ることもあります。バンベルク大学が創立されて以来、シュレンケルラは学生たちが世界を大きく変えるような議論を展開したり、神という概念を新しく定義したり、保守的な歴史観に代わる新しい何かを模索してきた場所でもあります。特に入学したばかりの1期生は熱心な学生たちです。しかし、ザイドラを3、4杯飲んだあとにはその深刻な表情も和らいでいきます。これもまさにシュレンケルラです。

 

Dominikanerklause mit Gewölbe aus dem Jahre 1310

築1310年、穹窿(きゅうりゅう)が美しいドミニカーナークラウゼ
このクラウゼ(日本語で庵)はかつてのドミニコ会修道院の礼拝堂、つまり修道士たちが毎日祈祷を行っていた場所です。この建物は教会財産国有化の一環として国に属すことになり、その後、トラム/グラーザー家がこれを政府から購入することになりました。

おかみさんがまだ少し肌寒い季節に、夏の到来を待ち切れないかのようにゼラニウムのプランターを木骨造の建物の外側に飾り、この居酒屋が夏の装いを纏うと、“ハウスプラッツ”と美しい中庭が再び活気のある場所に変わります。一年中人気のある3つの室内のエリア、ヴィルトシュトゥーベ、ドミニカーナークラウゼ、バンベルガー・ツィマーと同様、テラス席は暖かい季節を通して人気のエリアです。ここでは、昼間のコンサートを愉しんだ正装のご夫妻が、子供たちとハイキングを楽しみ疲れ切った様子の家族連れがついたテーブルに相席することも珍しいことではありません。喉の渇きが人々を結び付けているのです。シュレンケルラは、旧市街の中心であるだけではありません。バンベルクとその周辺地域に住む人々の心の中心地でもあります。この地域の人たちもそれを十分理解しているようです。おもてなしに居酒屋?そんな風に思われるかもしれませんが、ここでは世界中から迎えたお客様を誇らしげにに案内している地元の人たちをよく見かけます。シュレンケルラをうまく描写しようとした人は沢山いますが、この居酒屋をまとめて表現できるような言葉はなかなか見つからないようです。シュレンケルラが何かを理解したければこの地を訪れ、とにかく体験してください。

シュレンケルラの部屋. (英語のみ)