エヒト・シュレンケルラ・ラオホビア
ビール界の異端児

Aecht Schlenkerla Rauchbier

バンベルクと燻製ビールには切っても切れない絆があります。その絆から生まれたのがシュレンケルラです。バンベルクで最も生産量が多く、最も多くの人が訪れる、最も伝統的なこの燻製ビールは旧市街の曲がりくねった通り、大聖堂のほぼ真下、ドミニカーナー通り6番地にあり、夏になるとゼラニウムで飾り立てられる木骨造の建物で生まれました。ここに立ち寄り、「エヒト・シュレンケルラ・ラオホビア」の紛れもない深い風味を味わったことのない人は、バンベルクに行ったことがある、などと吹聴する資格はありません。「シュレンケルラ」がバンベルクの魔法の言葉になってから長い月日が経つとはいえ、この素朴な言葉がどのようにして生まれたのかを知っているのはほんの一握りの人たちです。土地の言い伝えによると、事故が原因で真っ直ぐ歩けなかったため、「シュレンケルラ(ふらつき男)」とニックネームが付けられたこの醸造所のオーナーの名前が、1678年から続くこの醸造所にも使われるようになったとか。現在醸造所を営んでいるのは6代目とはいえ、その名前は今日まで受け継がれています。

原麦汁濃度13.5%、アルコール度数約5.1%のシュレンケルラのラオホビアは、ダークな色合いが美しい、酸味と辛味が程よい下面発酵のメルツェン・ビールです。勿論、世のなかにはこれよりアルコール度数が強いビールもありますが、それでもエヒト・シュレンケルラ・ラオホビアを甘く見てはいけません。足下がふらついてしまうこともあります。

Aecht Schlenkerla Rauchbier

通の間では“新鮮な燻りのアロマ”と呼ばれるその薫りは、ブナの丸太を燃やした煙(深みのある香ばしい煙)がシュレンケルラの窯で麦芽に染み込み、最高品質のホップと混ぜ合わされ、シュテファンベルクの地下で700年間使われている岩窟貯蔵庫で熟成されるて生まれます。これが、特に「シュレンケルラ」の樽から直接飲むときに口に広がるあの極上のビールの味わいとなるのです。ビールの本場、ドイツバイエルン州の中でも異彩を放つビール。テーブルクロスで隠すのはもったいない、年月で白く擦り磨かれた木のテーブルに着いて、頭上の、ビールよりもダークな黒い梁出しに見守られながら飲む一杯。かつてのドミニコ会修道院の歴史を感じながら、1310年に建てられビールの居酒屋へと変貌を遂げた"あそこで"飲んでもいいし、自宅のくつろぎの場所で飲んでも美味しい。

舌利きなら時間をかけて、、ビールを五感でたっぷりと感じながら。二杯目のザイドラ(半リットル)は一杯目よりおいしく、三杯目は二杯目より美味しい。軽い朝酒として一杯、土地の人がキプフラとよぶパンに熱々のレバーケーゼをはさんだ昼の軽食に一杯。プレスザック(豚頭部肉のゼリー寄せ)、燻製肉、ハンドケーゼ(半透明のチーズ)がアレンジされた醸造所の伝統的な軽食メニューや、焼きソーセージとザワークラウトの一皿と合わせて一杯。一人でじっくりと一杯、たくさんの人に囲まれながら一杯。特に人に囲まれて飲むのはお奨めです。エヒト・シュレンケルラ・ラオホビアは人を明るく饒舌にし、地元の人々と訪問者を繋げてくれるのビールなのですから。

「最初の一杯はちょっと驚くような味。でも戸惑わないで、もう一杯。幸福感が大きくなっていくのだから、もっと飲みたくなってしまいます」。

グラスを置くコースターにはそう書いてあります。コースターに間違ったことなど書いてあるはずはありません!

ちなみに:伝統的に生産されている最後の2つの燻製ビール(バンベルクの醸造所スペツィアルとシュレンケルラ)の1つであるアヒト・シュレンケルラ・ラウホビールは、スローフード「味の箱舟」の乗客である

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